Easterlies

Easterliesは、日本語で『偏東風(へんとうふう)』。「風」は、外を歩けばおのずと吹いているものですが、私たちが自ら動き出したときにも、その場に「新しい風」を起こすことができます。私たちはこのタイトルに、「東から風を起こす」という想いを込め、経営やリーダーシップ、マネジメントに関する海外の文献を引用し、3分程度で読めるインサイトをお届けします。


組織変革は、誰との対話から始まるのか

「変革の必要性は、何度も伝えている。それでも、現場の動きが変わらない」

そう感じるとき、リーダーは説明を増やしたり、メッセージを強めたりしがちだ。しかし、その前に立ち止まってぜひ考えてみてほしい。

人々が動き出すうえで、何が難しさになっているのだろうか。

変革におけるリーダーの役割

たとえば、経営層が「部門を越えた協働」を掲げる一方で、管理職は自部門の業績で評価され、現場は他部門と連携する時間を確保できないとする。動きが変わらないのは、変革の必要性への不理解ではなく、方針に賛同はしているものの日々の判断では従来の仕事を優先せざるを得ないという葛藤が生じている可能性がある。

リーダーシップと組織変革を研究してきたジョン・コッターの変革モデルでは、その8段階のひとつとして、「物事の動きを遅らせたり、進展を阻んだりする障害を取り除く」ことを示している(※1)。

リーダーには、変革を呼びかけるとともに、人々が行動できる条件を整える役割があるのだ。では、その条件を探るために、何から始めればよいだろうか。

対話を通して互いの見え方を更新する

まず取り組みたいのは、変革の難しさを日々経験している人たちとの対話だ。
冒頭の例なら、他部門との連携を担う担当者に「協働を進めるうえで感じている難しさは何か」と尋ねてみる。「時間がない」という答えが返ってきたら、何に時間を使い、何を優先しているのかを共に確かめる。部門目標や評価が関わっていると分かれば、それらを決める管理職や連携先の部門長も、対話に誘う必要があるだろう。

このとき、「どうすれば賛成してもらえるか」だけに関心が向くと、対話ではなく、一方的な「説得」になりかねない。相手からもたらされる視点によって自分の見立ても更新する姿勢も必要だ。

組織研究者のワイクとクインは、対話の役割を論じる中で、組織心理学者シャインの次の言葉を引用している。

「会話の過程で、ある概念に対する他者の解釈が、自分の解釈と異なることを発見する」(※2)。

リーダーが「現場は消極的だ」という見方を改め、担当者も「今の仕事の進め方は変えられない」という前提を問い直す。そのとき、新しい選択肢を一緒に考え始めることができる。

対話の対象をさらに広げる

対話相手を考える際には、組織図には表れない、人々のつながりにも目を向けたい。

組織変革を研究するバティラーナとカシアロは、英国の医療組織を調査し、既存の制度や慣行から大きく離れる変革では、互いにつながっていない人々の間を橋渡しするネットワークが、変革の導入を助けることを示した(※3)。

変革を担う人がその間をつなぐことで、それぞれに見えていなかった現実がつながり始める。そのとき、異なる立場の解釈を持ち寄り、変革の実行に必要な協力や従来の枠を超える方法を共に探ることが可能となる。

また、対話は、現場からも始められる。たとえば、変革の方針は届いていても、実行する側の懸念が、判断する側に届いていないことがある。担当者がそれらを上司に伝え、上司が別の部門長に相談する。ひとつの対話で得た気づきが、次の相手への働きかけにつながっていく。そうした流れが生まれる環境づくりも必要だ。

今、どこで変革に向けた対話が途切れているのだろうか。そこに自ら働きかけることが、互いの見方を更新し、組織の未来に向けた動きを生むきっかけになるはずだ。

Q.組織の未来を考えるうえで、今、誰と誰の間で対話が途切れているだろうか?
Q.あなたは組織の未来に向けた対話に、誰を誘いたいだろうか?
Q.その人との対話を始めるために、あなたからどのような言葉をかけたいだろうか?

(記事執筆:コーチ・エィ マネージャー 柴田仁臣)

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【参考文献】
※1 Kotter. The 8 Steps for Leading Change.
※2 Weick, K. E., & Quinn, R. E.(1999). Organizational Change and Development. Annual Review of Psychology, 50, 361–386.ORGANIZATIONAL CHANGE AND DEVELOPMENT
※3 Battilana, J., & Casciaro, T.(2012). Change Agents, Networks, and Institutions: A Contingency Theory of Organizational Change. Academy of Management Journal, 55(2), 381–398. (PDF) Change Agents, Networks, and Institutions: A Contingency Theory of Organizational Change

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