書籍紹介

Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。


第4回 なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか
トランジション・コーチングの教科書
内村 創

成功体験の落とし穴

コーチ・エィ 取締役 常務執行役員、内村 創による著書『なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか トランジションコーチングの教科書』が、ディスカヴァー・トゥエンティワンから2026年3月20日に発売されました。本書は、トランジション(移行期)に直面するリーダーが、新たな役割・環境へ素早く適応し、成果を出すための具体的な行動指針や方法を示した実践書です。

発売を記念して、トランジションが難しい背景やそれを成功に導くためのヒントを、本書から抜粋してご紹介します(全6回)。

第1回
はじめに
第2回
トランジション発生頻度が増えている
第3回
トランジションの難易度も高まっている
第4回
成功体験の落とし穴
第5回
伴走者(コーチ)の存在
第6回
「能力」ではなく「関係性」へのコーチング

第4回 成功体験の落とし穴

トランジションを難しくしているのは、こうした外的な要因だけではありません。当事者自身の内側にも、大きな落とし穴があります。それが「成功体験の呪縛」です。特に、経験を重ね、実績を積み上げてきたリーダーほど、この罠に陥りやすくなります。

ある調査によると、新しくCEOに就任したリーダーの約5人に2人が、就任後18か月以内に退任しています。衝撃的な数字ですが、彼らの能力や経験に問題があったわけではありません。むしろ多くのケースでは、前職で顕著な成果を上げ、社内外から高い評価を受けていた人材でした。
では、なぜ短期間で退任に至ってしまったのか。理由の一つは、環境が変わっても、これまでの成功体験をそのまま持ち込んでしまったことにあります。企業の成長フェーズや市場の構造、組織文化、人材構成―それらが大きく変化しているにもかかわらず、「これまで自分を成功に導いてきたリーダーシップの型」を無意識にそのまま踏襲してしまったのです。
たとえば、急成長期の組織を率いた経験を持つリーダーが、成熟した大企業の再生を担うポジションに就いたとします。スピードと突破力で成果を上げてきた彼は、「自分が先頭に立って走れば組織は変わる」と信じ、周囲を巻き込もうとします。しかし、既存の利害関係や組織の慣性が強い環境では、そのやり方はむしろ摩擦を生み、信頼関係を損なう結果となります。
逆に、安定志向の企業文化で育ったリーダーが、変化の速いテック業界に飛び込んだ場合はどうでしょうか。慎重に合意形成を図ろうとするうちに、意思決定のスピードが追いつかず、機会を逃してしまうこともあります。
明らかな失敗に至らずとも、潜在能力を十分に発揮できないリーダーは少なくありません。自分を成功に導いてきたパターンを手放せず、環境の変化に合わせた行動様式の再構築ができないまま時間が過ぎていくのです。
問題は「能力の有無」ではなく、「状況の変化に合わせて自らを変えられるかどうか」にあります。
リーダーシップとは、固定的なスキルやスタイルではなく、文脈に応じて姿を変える「動的な能力」です。この「自分自身の変化」を求められるところに、トランジションの本質的な難しさがあります。

なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか

なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか

著者:内村 創
発行日:2026年3月19日
出版元:ディスカヴァー・トゥエンティワン


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