Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。
第3回 なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか
トランジション・コーチングの教科書
内村 創
トランジションの難易度も高まっている
コーチ・エィ 取締役 常務執行役員、内村 創による著書『なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか トランジションコーチングの教科書』が、ディスカヴァー・トゥエンティワンから2026年3月20日に発売されました。本書は、トランジション(移行期)に直面するリーダーが、新たな役割・環境へ素早く適応し、成果を出すための具体的な行動指針や方法を示した実践書です。
発売を記念して、トランジションが難しい背景やそれを成功に導くためのヒントを、本書から抜粋してご紹介します(全6回)。
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第1回
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はじめに |
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第2回
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トランジション発生頻度が増えている |
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第3回
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トランジションの難易度も高まっている |
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第4回
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成功体験の落とし穴 |
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第5回
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伴走者(コーチ)の存在 |
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第6回
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「能力」ではなく「関係性」へのコーチング |
第3回 トランジションの難易度も高まっている
トランジションは、頻度が増えているだけではありません。一つひとつの難易度が、確実に上がっています。その背景には、いくつかの変化があります。
まず、ビジネスの不確実性がかつてなく高まっています。競争環境は激しく、昨日の成功の方程式が、今日にはもう通用しなくなる。以前なら、新しい環境に移っても業界の常識や成功パターンを学べば適応の道筋が見えました。しかし今は、異動先の環境自体が変化し続けているため、「何に適応すればいいのか」すら定まらないまま走り出さなければなりません。
新しい環境で協働する相手も多様になっています。グローバル化やプロジェクト型の働き方が進み、複数の部門や海外拠点との横断的な協働が当たり前になりました。異動した先でそうした環境に直面することもあれば、自分は動いていなくても、組織再編やM&Aによって周囲の環境が一変することもあります。関わる相手が多岐にわたる分、把握すべき関係者や組織の数が膨大になることも珍しくありません。
また、性別、世代、国籍、働き方、価値観―一人ひとりの前提が異なるダイバーシティ環境も広がっています。異なる文脈や価値観を持つ相手と連携するには、従来のマネジメントではなく、一人ひとりに向き合う「コーチ型」の関わり方がより求められています。しかし、その関わり方の正解も、相手ごと、場面ごとに変わります。
さらに、新たなスキルの獲得も不可欠になっています。デジタル技術の進化、AIの台頭―これまでの経験だけでは対応できない領域が広がっています。新しい環境に移ったとき、役割や人間関係に適応するだけでなく、同時に新しいスキルも習得しなければならない。適応と学習を同時に求められるのです。
そして何より、成果を求められるスパンが短くなっています。新しいポジションに就いても、猶予期間はほとんどありません。「まず結果を出してほしい」と言われ、自分の立ち位置や方向を確かめる間もなく、すぐに走り出すことが求められます。新たな環境に適応しながら、同時に成果を出す―その二重の負荷の中で、多くの人が手探りで前に進むことを余儀なくされているのです。
昇進も、異動も、転職も、かつては「節目」として立ち止まる時間がありました。けれど今は、立ち止まることすら許されません。
本来、トランジションには内省の時間が必要です。「自分は何を大切にしてきたのか」「これからどんなことを実現したいのか」―そうした問いに向き合うことで、人は新しい役割に自分なりの意味を見出していきます。しかし現実には、その猶予がほとんど与えられません。問い直す間もなく次の課題が降りかかり、走りながら考えることを強いられる。この「内省なき適応」を求められることが、トランジションの難易度をいっそう高めているのです。
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