Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。
第6回 なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか
トランジション・コーチングの教科書
内村 創
「能力」ではなく「関係性」へのコーチング
コーチ・エィ 取締役 常務執行役員、内村 創による著書『なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか トランジションコーチングの教科書』が、ディスカヴァー・トゥエンティワンから2026年3月20日に発売されました。本書は、トランジション(移行期)に直面するリーダーが、新たな役割・環境へ素早く適応し、成果を出すための具体的な行動指針や方法を示した実践書です。
発売を記念して、トランジションが難しい背景やそれを成功に導くためのヒントを、本書から抜粋してご紹介します(全6回)。
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第1回
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はじめに |
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第2回
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トランジション発生頻度が増えている |
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第3回
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トランジションの難易度も高まっている |
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第4回
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成功体験の落とし穴 |
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第5回
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伴走者(コーチ)の存在 |
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第6回
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「能力」ではなく「関係性」へのコーチング |
第6回 「能力」ではなく「関係性」へのコーチング
トランジションは、これまでお伝えしたとおり1人で超えられるものではありません。新しい環境、新しい役割に向き合うとき、人は必ず不確実さや孤立を感じます。周囲とどのような関係性を築き、影響し、影響されるのか、ということが何より大事になります。また、どれほど能力が高くても、どれほど経験を積んでいても、他者との協働なくして変化を乗り越えることはできません。
トランジションコーチングでは、この「誰と共に挑むか」という問いを最初から明確にします。なぜなら、変化のプロセスは個人の意思だけで完結しないからです。
人は環境の中で動き、他者とのやり取りを通じて自己を形づくっていく存在です。この背景にあるのが、前述した「社会構成主義」という考え方です。社会構成主義とは、「私たちが現実と呼んでいるものは、他者との対話や関係性の中でつくられていく」という思想です。そして、人の認識や意味づけは、他者との関係や会話の中で構築されるという考え方です。つまり、「自分とはこういう人間だ」という物語も、実は他者との関係の中で形づくられていくということです。
人は孤立した存在ではなく、常に誰かとの関わりの中で意味を見出し、自己を定義していきます。つまり、「自分とは何者か」という物語は、他者との関係を通じてつくられていくのです。職場での役割、上司や部下との関係、組織文化や期待──それらがあなたの「自分像」を映す鏡になっているのです。この視点を持つことが、トランジションを成功に導く第一歩になります。
私たちのコーチングは、この哲学を実践的に活かしています。クライアントが新しい役割に就くとき、その成功は個人の能力だけでは決まりません。むしろ、上司、部下、同僚、外部パートナーといった「キーパーソンとの関係性をどれだけ早く築けるか」が、トランジションの成否を左右すると考えています。
そこでコーチは、クライアントに「誰と、どのような関係を築く必要があるのか」を問いかけます。この対話を通じて、クライアントは自身を取り巻く他者へと視点を向けながら、自分の行動や考え方を再構築していきます。つまり、コーチングとは単なる助言ではなく、現実そのものを共同でつくり変えていくプロセスなのです。
私たちが重視しているのは、このような対話によって現実を再構成する力を育むことです。それこそが、変化の激しい時代においてトランジションを成功させる最も実践的な方法だと考えているのです。
不確実な環境の中で必要なのは、孤立した決断力ではなく、関係性を通じて新しい意味を生み出す力です。私たちのコーチングは、その力を引き出すために設計されています。それは長年の試行錯誤によって積み重ねられてきた技術の集積なのです。
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